このインタビューでは、カンボジアに目を向ける人が少ないのはなぜか?ということについて、詳しく聞いていきましょう。

少子高齢化の日本において、日本円だけで資産を持っているリスクのお話、外貨で資産を増やしていくためにはどのような可能性があるのか。外貨で資産を増やしていく仕組み作りが必要であること。また、海外に投資をすると考えた場合に、どのような選択肢があるのかを考えていきました。

そして、世界情勢を見ていくと、20年ほど前から現在のタイの伸び率を考えると、これからの投資対象として、カンボジアはどうかという提案がありました。
カンボジアが今、なぜ投資対象になり得るのか、今のカンボジアの経済の伸び方や、若い人の多い国であること、政情は安定してきているのかなどのお話もありました。

そして、投資する対象としてのカンボジアは、米ドル経済であることも大きな理由でした。
カンボジアは現在、7パーセントの経済成長が続いています。その上、政治的にも安定した時代に突入しています。
こう書くととても魅力的な国と思えるのですが、実際投資まで至る人は少ない気がします。そのあたりを当社の松本部長に聞きました。

松本 憲幸(富士リアルティ・海外事業部 部長)

年間20回以上の投資セミナーを開催する傍ら、年間20回以上の各種投資セミナーに自らも参加し、不動産を中心に広く投資の情報を収集し、顧客へのフィードバックを行っている。
年に数回、カンボジアに数週間滞在し、現地スタッフの教育、市場動向調査、新規プロジェクトの視察などを行う。不動産歴15年。

カンボジアはあまりニュースでも聞かないし、企業も目をつけていないように思うのですが?

松本何か裏があるように思いますよね。それも当然のことだと思います。カンボジアは、多くの人に敬遠されていると思います。なぜなら、カンボジアの現在の経済情勢をよく知らない方が多いからだと考えられます。

カンボジアと聞いて連想するのが、アジアでのとても貧しい国だとか、ポル・ポトの大虐殺、地雷と思いついてしまい、いいイメージの単語が思いつきません。確かにそれはかなり過去の記憶になりつつありますね。

松本こうした単語のインパクトはかなり強いですので、どうしても印象に長く残ってしまうため、カンボジアは敬遠されているのだと考えております。そのせいで、積極的に知ろうとする方もとても少ないのが現状です。

だからこそ、人と同じ投資をしていては利益がでないと考える人にとってはチャンスかもしれません。

松本今、明るい面に注目すると、かなり良い投資対象だと考えております。たとえば、20年前のタイについて考えてみましょう。
タイにも、過去クーデターなどの政情不安がありましたが、この20年で大きく経済成長をしました。また、私は個人的に中国の深セン市にも似ていると考えています。

深センといえば、今中国で経済的に重要な都市になっていますね。深センの物件も、便利なところはかなり値上がりしたと聞きました。

松本タイや、深センの過去と現在を比較してみると、カンボジアがこれから大きく成長する要素があるのではないかと考えております。

もうひとつ、カンボジアが日本であまり話題にならないのは、ニュースにならないからという理由も考えられます。カンボジアはまだ、日本企業の工業拠点にはなっていないため、あまり話題にのぼらないのです。

日本は人件費の安い東南アジアを中心に、工場を作ることがよくありますね。日本の企業に所属しつつ海外で暮らす人も多いから、たくさんニュースになるわけですね。

松本そうです。たくさんの日本人が東南アジアの拠点のニュースを知りたいため、よく話題にあがります。

カンボジアにはなぜ日本企業が進出していないのですか?

松本実は、それには理由があって、それがカンボジアがあまり注目されない理由でもあります。

1つめに、国内で消費する電力の30%程度しか自国で発電できないこと。これでは需要に対して安定した電力を確保できません。2つめは、足りない電力を現在、タイやベトナムから借りているため、電気代がアジアで一番高価になっている。

という2つが理由です。

電力の供給が安定していないと生産業は安定しないですし、人件費が安くても電気代が高いのは二の足を踏んでしまいますね。

松本電力面での問題があるため、まだ日本企業が進出していないのだと思います。企業が進出しないと、電力供給も改善されていかないという負のサイクルができあがっています。

カンボジアはどういう対策をしているのですか?

松本https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_005897.html

これは外務省のHPです。カンボジアの電力供給安定のための、政府の支援が第2期のフェーズに入ったことが記されています。
『カンボジアでは,プノンペン近郊の経済特別区を中心に日系製造業の進出が増加しており,入居する日本企業にも裨益することが期待されます。』とあるように、日本政府が継続的に支援していることがわかります。

ここに目をつけるかどうかが投資の分かれ目ではないかと考えています。

実際に日本企業がバンバン進出するようになると、カンボジアも地価はどんどん上がることが予想されますね。

松本今はまだ、潜在的なポテンシャルはあるけれど、注目されていない会社に投資することによく似ています。そのような会社の株は割安ですから、人気が出る前に買っておけば、のちのち大きな利益を生むことになります。それによく似ています。カンボジアも、多くの人が注目していないうちに、投資を始めるのがチャンスではないでしょうか。

私の考えでは、新興国に投資する上で重要なのは、歪みだと思います。

歪みとは、今後の成長が見込めるけれども、まだコンプライアンスや、法令などが整っていない状態のことです。投資を進める上では、そのような歪みに関する情報を、いち早く入手することが鍵になります。

例えば、タイでは、過去に海外送金可能なネットバンク付きの銀行口座を持つことができました。その時点では、それがタイにおける歪みでしたので、活用する人がどんどん増えていったんですね。結果として、その後法令が整備され、現在ではそのような口座を持つことはできなくなりました。

新興国でこのような歪みを発見すると、すぐに是正されていきます。情報戦のようですが、大勢の人が注目する前に早く情報を仕入れて活用することが、投資のチャンスだとも言えます。

今回のインタビューでは、カンボジアについてより深く理解することができました。私も実際に外務省のホームページを見てODAについても知りました。
なぜこれまで、カンボジアが注目されなかったのか、ニュースになりにくいのか、また、なかなか日本企業が進出しない理由もわかりました。

これからのカンボジアには、とても期待しています。海外からのODAによる支援で、電力供給が安定すると、中国よりもまだ人件費が安いカンボジアに、さまざまな企業が進出してくるかもしれません。そうすると、移住者や駐在者も増えるために、カンボジアの地価や物件の価格が上昇することが予想できます。まだ多くの人が注目する前に、カンボジアに投資のチャンスを見出せる気がしてきました。

次回のインタビューでは、実際に投資を進める上で、気をつけるべき業者の選択について聞きたいと思います。