前回、2023年12月に来日されたフン・マネット首相やスン・チャントール副首相の講演を取り上げました。今回はもう少し細かい不動産マーケットについて書いていきたいと思います。
改めて2023年を振り返ると、カンボジア政府が2023年に承認した不動産プロジェクトは、2022年に比べて20パーセントほど少ないものとなりました。経済財務省によると2023年に承認された不動産建設プロジェクトは合計で2,300件を少し上回る承認があったそうです。
ただ、全体の数字は2022年から減少しているものの、建設分野の面積と設備投資は回復の兆しを見せており、様々なプロジェクトも進行中ということもあり、カンボジアのコンドミニアム市場においてもポジティブな見方を現地の専門家がしているとのことです(現地クメールタイムス記事より)。
とはいえ、この点に関しては現地で動いている不動産会社からすると違う見方もあると思います。中古の流通が厳しい、すなわち買い手が出てこないというジレンマもあると思いますし、そんなに新築ばかり作られても、という考えはあるかもしれません。不動産マーケットは回復傾向、とはどこの国でも言われていることであり、だからと言ってそのまま飛びつく情報というわけでもありませんので具体的に投資をする際は物件をきちんと見極める必要があります。
さて、さらに深掘りしていきますが、CBREのデータによると、2023年のプノンペンのコンドミニアムの価格について、高級コンドミニアムは平米単価で2,700ドル、中級クラスは2,200 ドル、手頃な価格のカテゴリーで1,500ドル弱という状況です。
また、土地付き不動産の平均販売価格は平米単価800ドルから1,200ドルの間となっています。これが首都プノンペンのボンケンコン(BKK)の高級コンドミニアムともなれば、当然ながら平米単価は跳ね上がります。これはあくまでプノンペン全体の数字ということを理解しておいてください。
そして、首都には現在8,200 戸を超えるサービスアパートメントがあり、上述した通り、BKKともなれば依然として最も人気のあるエリアとなっており、総供給数の3分の1を占めていると言われています。プノンペンのサービスアパートメントの累計供給戸数は、2026年までに約9,000戸に達すると予想されており、サービスアパートの人気ぶりが目につきますが、これはお隣のタイのバンコクでも似たような上昇が20年近く前に起きたので理解できる範囲だと思います。
さらにコンドミニアムで言うと、プノンペンには 約41,000戸以上のコンドミニアムがあり、BKKがあるチャムカーモン区が22%と最も多く、続いてイオン2号店があるセンソックで18%、イオン3号店があるミンチェイ区も18%、王立プノンペン大学があるトゥールコーク区で11%となっています。
そして、2028年までに予測ではありますが、8万戸以上になると言われています。これが果たして供給過剰なのかどうか。正直なんとも言えませんが、カンボジア人の所得が上がっていく、また海外からの投資が積極的に増えていくという状況になれば決して多くはないと思います。
ただ、あくまで投資として考えるのであれば、この供給戸数が見込まれているわけですから、プノンペンで投資をするのであれば「より良い物件」を選ぶ必要性があると思います。そこだけは十分注意していきたいですね。
そして一方で課題でもある中古流通に関してですが、現段階では厳しい状況が続いています。上記の通り供給戸数は増えていくので、どこかでストップがかかるということはないでしょう。ですので、立地、物件ブランド、物件の質、デベロッパーの信頼性、これらはきちんと把握しておく必要があると思います。
最後にCBREの調査においてプノンペンは米ドル経済ということもあり、また投資に関しても政府が積極的であることから期待感があると締め括っています。特にプノンペンの南部にフォーカスを当てていますが、イオン3号店ができ、チップモンモールも人気になっています。5年ほど前には何もなかったこれらのエリアが地価の上昇を迎えています。
プノンペンにはチャンスが残っているとCBREは書いていますが、不動産マーケットとしては理解できますが、個人の投資という点ではくれぐれも物件の選定が重要であり、それさえクリアできれば、米ドルで投資できるプノンペンは2024年も確かに面白い投資エリアだと思います。