今月19日にカンボジアのフン・マネット新首相が来日され、JETROで講演をされました。今回はそんなフンマネット新首相やスン・チャントール副首相が語った言葉、また日系企業の進出状況から2024年のカンボジア不動産を考えたいと思います。
まずフン・セン前首相の息子でもある、フン・マネット新首相が英語で基調講演を行い、2050年までにカンボジアは高所得国になるという目標を設定したと語りました。
これは就任時に語った内容と同じで、この目標を達成するために「ペンタゴン戦略」を策定し、実行に移すというものとなります。
今回の講演でピックアップされたのは、中小企業への補助金やサポート、そして2021年に制定された新投資法(2023年運用開始)に基づき多くの優遇措置を設けて海外からの新規投資を呼び込みたい、その中には当然日本もカンボジアに投資して欲しいという強い内容でした。
フン・マネット氏が来日をしてこうやって語りかけていくというのは、フン・セン前首相も同様でしたが、やはり46歳という若さもあるせいか、聴衆も聞き入っていたように思います。非常に楽しみなリーダーが出てきた、そんな予感さえする講演でした。
その後、スン・チャントール副首相が新投資法について、より具体的に「外国資本であってもネガティブリストは設定しない」
「カンボジアからの送金規制をせず、よりオープンな状況で投資して欲しい」など語られました。
一方で物流コストの高騰や役所における不正な裏取引など、まだまだ課題があると認識、この辺りは政府としてもオンライン化、DX化で改善していきたいと語られました。
スン・チャントール副首相はフン・セン前首相の時の上級大臣であり、運輸大臣でもあります。非常に優秀な方で、今回の新内閣で大きく人事が入れ替わったにも関わらず、フン・マネット新首相政権下において副首相になられた方です。
このフン・マネット新首相、スン・チャントール副首相コンビが今後のカンボジアを大きく動かしていくと現地でも言われています。
そしてJETROセミナーにおいては実際に現地に進出している日系企業の方達が登壇されました。
豊田通商、ミネベア、イオンモールといった日本を代表するような企業です。
彼らが一様に語ったのは、カンボジアの人件費の安さ(タイと比べて)、そして勤勉な国民性と政治の安定さ、ということです。
特に皆様、ご存知のイオンモールは現在カンボジアで3店舗あります。先ほど、スン・チャントール副首相が言われた物流に課題があるということでイオンは早速イオンモール・カンボジア・ロジプラスという会社を設立し物流センター事業に動き出しているようです。
また売上ベースで見ても、地方関東圏の売上を上回るそうで、なかなかの購買力を見せています。これは非常に素晴らしいご報告でした。
今回のJETROセミナーを通して、カンボジアの魅力を伝えようというフン・マネット首相、スン・チャントール副首相の強い決意が見えてきました。
残念ながら、総人口が1,700万人ほど、首都プノンペンにおいても250万人弱というまだまだ小国ですから、どうしても外国の力を頼る必要があります。
しかし、以前のような「(内戦による)かわいそうな国」というイメージは確実に薄れていき、「若く力の溢れる国」という印象が強く残りました。
不動産業界においては、乱開発や不正の横行、そして適当な管理体制などまだまだ足元を見れば十分ではないかもしれませんが、新政権になり、これだけ力強い言葉を発していくこの政権に期待をしています。
実際に、精力的に各国を回られているフン・マネット首相ですから、2024年以降、カンボジアへの投資も増加してくるでしょう。そうなった時に不動産を含むインフラ整備は急ピッチで行われています。
2023年に新政権になりました。2024年はまだまだ基礎づくりの段階かもしれません。
しかし2030年には高い中間所得国になる、という未来に向かっての第一歩の年、そんな気がします。
不動産投資においても、すぐに結果が出るようなものではありません。
一歩一歩着実に積み上げていくものになりますから、カンボジア新政権の船出とともに我々もまた新しい一歩を踏み出す、そういう年になりそうです。